茶入の伝来【文琳】唐物

文琳茶入 茶道具

四ヶ伝や奥儀の問答をする時に役立つご伝来や仕覆の一覧です。
現在所蔵されている美術館等も記載しましたので、
機会があれば是非足を運んで、実物を拝見させていただきたいものです。

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文琳茶入のご伝来

岩城文琳(いわき)【唐物】中興名物

岩城文琳(いわき)【唐物】中興名物
別名:上天文琳
仕覆:鳥襷緞子、白地古金襴、柿地大内菱金襴、濃花色白極緞子、(花色地蔓紋緞子)
盆:青貝唐子絵四方盆

岩城貞隆(伊達政宗の従兄弟)→松平陸奥守(=伊達政宗)、伊達代々→坂本金弥(山陽新聞創刊・衆議院議員)
※藤田美術館さんにあるという説がありましたが、藤田美術館さんにお電話でお問い合わせしたところ所有されていないそうです。

・岩城貞隆が所有したことから命銘
・上天文琳の銘は「無上に優れているから」説と「唐の天子の上覧に供したから」説がある

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宇治文琳(うじ)【唐物】名物

宇治文琳(うじ)【唐物】名物
仕覆:浅黄地緞子獅子丸(遠州好)、梅鉢龍丸(織部好)、間道横筋(石州好)、萌黄地金襴(鎮信好)、萌黄地笹蔓緞子(鎮信好)
盆:若狭盆(縁青漆、内朱、底黒)

片桐石州(小堀遠州の後継者・将軍家茶道師範)→松浦鎮信(平戸藩主)松浦代々、松浦厚(伯爵)→松永安左エ門(=松永耳庵・実業家・電力王)→東京国立博物館(東京国立博物館 公式サイト

文琳茶入 銘 宇治【文化遺産オンライン:文化庁】

・利休が宇治文琳の若狭盆の箱蓋に「ウチフンリンノホン」と書いたことからの銘

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珠光文琳(じゅこう)【唐物】大名物

珠光文琳(じゅこう)【唐物】大名物
別名:天王寺屋文琳、宗及文琳
仕覆:青地金襴(珠光好)、紹鷗緞子、萌黄地宝珠紋緞子(利休好)、竪縞間道(織部好)、鶴紋緞子(三斎好)、浅黄地唐草緞子(船越伊予守好)、青海波紋緞子、有楽緞子、茶色地唐物緞子
盆:朱塗在星雲龍四方盆(縁菊折枝模様、底黒塗)

村田珠光→津田宗及(=天王寺屋宗及、豪商・茶人)→織田信長津田宗及(=天王寺屋宗及)→袴田内匠(堺の浪人)→細川忠興(=細川三斎)→徳川家光徳川代々水戸徳川家南部家代々(盛岡藩)、南部利淳(伯爵)

・珠光が愛蔵していたことから「珠光」命銘(珠光、書状を添える)
・天王寺屋宗及が所有したことから「天王寺屋」「宗及」命銘
・千利休、今井宗久、天王寺屋宗及で「天下三宗匠」
・仕覆だけではなく、由緒伝来添書状や添茶杓も多い

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白玉文琳(しらたま・はくぎょく)【唐物】大名物・重要美術品

白玉文琳(しらたま・はくぎょく)【唐物】大名物・重要美術品
別名:丸屋文琳
仕覆:正法寺緞子、白地宝尽小牡丹唐草文金襴

京の丸屋林斎→東本願寺伊達綱村(仙台藩主・伊達政宗の曾孫)→徳川綱吉松平忠周(綱吉の側用人・老中・大名)代々→根津壽一郎(根津青山、実業家・貴族院議員・鉄道王)→根津美術館(公益財団法人 根津美術館 公式サイト

文琳茶入 銘 白玉【文化遺産オンライン:文化庁】

・丸屋文琳は丸屋林斎が所有したことから命銘
・畳付のすぐ上で白釉が白玉状になっていることから「白玉」の銘になったという説がある

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吹上文琳(ふきあげ)【唐物】中興名物

吹上文琳(ふきあげ)【唐物】中興名物
仕覆:縬間道(しじら)、白極緞子

小堀遠州酒井忠以(宗雅・播磨姫路藩主)→松平不昧代々、松平直亮(伯爵)→五島慶太(東急の創始者)→五島美術館(公益財団法人五島美術館 公式サイト)

五島美術館の公式サイトにて写真を拝見することができます。
「コレクション」→「茶道具」→「茶入」→「唐物文琳茶入 銘 吹上」

・小堀遠州が茶入の景色を「吹上の浜の波」にたとえて、『古今集』の『秋風の吹上に立てる白菊は花かあらぬか浪の寄するか』から命銘

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本能寺文琳(ほんのうじ)【唐物】大名物・重要美術品

本能寺文琳(ほんのうじ)【唐物】大名物・重要美術品
別名:朝倉文琳、三日月文琳
仕覆:朝倉間道、水鳥緞子、紋筋緞子、縬間道(しじら・縮羅)、竪筋緞子、紺地花兎金襴
(大阪蜀金や造土緞子と文字で記載の本もありますが、茶道美術全集[昭和45年]の写真では上記6種の仕覆が写っています)
盆:堆朱五葉盆(張成作)

朝倉義景織田信長本能寺→中井正清(大和守主水)→6代目小堀仁右衛門→山越利兵衛(道具商)→松平不昧代々、松平直亮(伯爵)→五島慶太(東急の創始者)→五島美術館(公益財団法人五島美術館 公式サイト)

五島美術館の公式サイトにて写真を拝見することができます。
「コレクション」→「茶道具」→「茶入」→「唐物文琳茶入 銘 本能寺」

・織田信長が本能寺に寄進したので本能寺文琳の銘
・朝倉義景が所有したことから朝倉文琳の銘
・三日月状の釉抜けがあるので三日月文琳の銘

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