四ヶ伝や奥儀の問答をする時に役立つご伝来や仕覆の一覧です。
現在所蔵されている美術館等も記載しましたので、
機会があれば是非足を運んで、実物を拝見させていただきたいものです。
茄子茶入のご伝来
北野茄子(きたの)【唐物】大名物
北野茄子(きたの)【唐物】大名物
仕覆:珠光間道(利休好み)、本能寺緞子(遠州好み)、紫地作土紋龍金襴
盆:唐蒔絵柘榴絵四方盆(内朱、外緑地)
松本宗不→筑紫の吉永四郎→豊臣秀吉→油屋常言(豪商、利休の弟子)→妙国寺→西宗真(貿易商)、九郎兵衛→奥平藤左衛門(伊予松山藩久松松平家の家臣)→松平定直(伊予松山藩4代藩主)→徳川将軍家代々→野村徳七(得庵)→野村美術館(公益財団法人 野村文華財団 野村美術館 公式サイト)
野村美術館 開館35周年名品展 2018年9月8日~12月9日「茶の湯の美・能楽の美・日本の美」にて「北野茄子茶入」が展示されておりました
・天文19年(1550年)に松本宗不が所持していた時点ですでに「北野茄子」と呼ばれていたが、銘の由来は不明
・国司茄子、富士茄子、北野茄子で「天下の三茄子」
京極茄子(きょうごく)【唐物】大名物
京極茄子(きょうごく)【唐物】大名物
別名:織田茄子(おだ)
仕覆:定家緞子、、紺地人形手緞子、鉄色地梅鉢唐草紋緞子、鉄色地雲鶴卍紋緞子
京極家→半田紹和(足利幕府茶匠)→石橋道叱(=天王寺屋道叱・豪商、茶人)→赤橋善海、赤橋道柏(播磨の真言英賀衆)→豊臣秀吉→織田長好(=織田三五郎可休、茶人、信長の弟である織田有楽斎の孫)→徳川家康→徳川綱重(甲斐国甲府藩主)、徳川綱豊(=徳川家宣、江戸幕府の第6代征夷大将軍、徳川綱重の子)、徳川本家代々→紀州徳川家、徳川頼倫(侯爵・貴族院議員)
・「京極」は京極家が所持していたことからの銘
・「織田」は茶人織田可休が所持していたことからの銘
国司茄子(こくし) 【唐物】大名物・八幡名物
国司茄子(こくし) 【唐物】大名物・八幡名物
仕覆:国司間道、白極緞子(解袋)、萌黄地唐物緞子、花色地唐物緞子、モール横筋
盆:堆朱 竹林七賢(ちくりんしちけん)
北畠家(伊勢国司)→若狭屋宗可(堺の豪商)→松花堂昭乗(石清水八幡宮瀧本坊の社僧)→勝兵衛(道具屋)→酒井忠禄(若狭小浜藩藩主)、酒井忠道(伯爵)→藤田平太郎(男爵)→藤田美術館 (公益財団法人 藤田美術館 公式サイト)
藤田美術館公式サイトにて写真を拝見することができます
「入門50選」→「時代を超えて愛される茄子 国司茄子茶入」
・伊勢の国司である北畠氏が所持したことから「国司」の銘がつく
・天下第一の茄子と称賛された茶入
・国司茄子、富士茄子、北野茄子で「天下の三茄子」
紹鷗茄子(じょうおう)【唐物】大名物・重要文化財※湯木美術館
紹鷗茄子(じょうおう)【唐物】大名物・重要文化財(みほつくし)※湯木美術館
※紹鷗茄子と呼ばれるものは主に2つあり、湯木美術館の「紹鷗みほつくし茄子」の方です
別名:みほつくし茄子(みをつくし茄子)、松本茄子
仕覆:紹鴎間道、正法寺緞子
盆:四方盆(利休在判)
松本珠報(=永昌坊正楽、珠光の弟子)→鳥居引拙(珠光の弟子)→武野紹鷗→今井宗久(茶人・天下三宗匠)→織田信長→今井宗久(茶人・天下三宗匠)→豊臣秀吉→今井宗薫(今井宗久の子)、今井宗呑→徳川家光→東本願寺→粟津左近→河村瑞軒→瓦屋平兵衛→坂本周斎(=閑事庵宗信、=山田宗徧、表千家7代如心斎の弟子)代々→鴻池善右衛門(豪商・男爵)→湯木貞一(日本料理店「吉兆」の創業者)→湯木美術館(公益財団法人 湯木美術館 公式サイト)
湯木美術館 公式サイト「湯木美術館について」で「唐物茶入 銘 紹鷗みほつくし茄子」の写真が拝見できます
・「紹鷗茄子」の底に紹鷗の書判で「みほつくし」とあるため「みほつくし(澪標)茄子」とも言う
紹鷗茄子(じょうおう)【唐物】大名物・重要美術品※サンリツ服部美術館
紹鷗茄子(じょうおう)【唐物】大名物・重要美術品※サンリツ服部美術館
※紹鷗茄子と呼ばれるものは主に2つあり、サンリツ服部美術館の「紹鷗茄子」の方です。
仕覆:大内菱金襴、紺地唐草模様緞子、縬間道(しじら)
武野紹鷗→辻玄哉(紹鷗の弟子、松尾流茶道の流祖)→鍋島帯刀(肥前鹿島藩)→松平直矩(川越藩の松平大和守)代々→益田信世(実業家・小田原市長)→服部一郎(セイコーエプソンの初代代表取締役社長)→サンリツ服部美術館
サンリツ服部美術館 展示会2022年9月16日~12月4日【服部一郎生誕90周年記念 名物 記録と鑑賞】にて 重要美術品「唐物茄子茶入 銘 紹鷗茄子」が展示されておりました
美術展ナビの記事:「服部一郎生誕90周年記念 名物 記録と鑑賞」にて「紹鷗茄子」の写真を拝見することができます。
付藻茄子(つくも)【唐物】大名物
付藻茄子(つくも)【唐物】大名物
別名:九十九髪茄子(つくもかみ)、松永茄子(まつなが)
仕覆:破袋(「白地金襴仕覆に入れ四方盆に乗る」という記録がある)
足利義満、義政→山名政豊(山名宗全の子)→珠光→三好宗三(戦国時代の武将・茶人)→朝倉宗滴(=越前の朝倉太郎左衛門)→越前の小袖屋→松永久秀(戦国大名・茶人)→織田信長→豊臣秀吉、秀頼→徳川家康→藤重藤元(奈良の茶器塗師)藤重家代々→岩崎弥之助(三菱財閥総帥)、岩崎久弥→静嘉堂文庫美術館(公益財団法人 静嘉堂文庫美術館 公式サイト)
静嘉堂文庫美術館 公式サイトで写真が拝見できます
静嘉堂文庫美術館公式サイト→所蔵品紹介→陶磁→大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子
読売新聞社オンラインの記事へのリンクです→「紡ぐプロジェクト」修復の技 慈しみの心~静嘉堂「付藻茄子」陶器の破片、漆でつなぐ(パソコン用サイト)
・古来は「つくもがみ」と呼ばれていた
・「九十九髪茄子」は「伊勢物語」の「百とせに一とせ足らぬ九十九髪我を恋ふらし面影に見ゆ」からの銘
・珠光が九十九貫で購入したからという説もある
・「付藻」は「付喪神」で二つある石間が両目のようであったからという説もある
・「松永茄子」は松永久秀が所持したことからの銘
福原茄子(ふくはら)【唐物】大名物
福原茄子(ふくはら)【唐物】大名物
仕覆:笹蔓緞子、紺地巻龍緞子、白地木綿地縞間道、紺地緞子(白紋緞子と記載の物もありますが、昭和45年の茶道美術全集の写真では紺地緞子が写っております)
盆:唐物無地朱四方盆
前田利治(=松平飛騨守、加賀国大聖寺藩の初代藩主、前田利家の孫)→新庄直好(=新庄越前守、常陸麻生藩3代藩主)→伊達綱村(仙台藩4代藩主)、伊達家代々→島徳蔵(大阪の相場師)
・「福原」は所有者の名前だと言われているが詳細は不明らしい
富士茄子(ふじ)【唐物】大名物・重要文化財
富士茄子(ふじ)【唐物】大名物・重要文化財
仕覆:剣先緞子、モール段織間道、弥三右衛門間道(解袋)、モール間道(解袋)
盆:四季丸盆(内朱、外堆朱彫草花)
足利義輝(室町幕府第13代征夷大将軍)→曲直瀬道三(医師)→祐乗坊(医師)→織田信長→曲直瀬道三(医師)→豊臣秀吉→前田利家、前田家代々→前田育徳会(公益財団法人 前田育徳会 公式サイト)
石川県立美術館 前田育徳会尊經閣文庫分館 特別陳列2023年9月16日~10月22日・10月27日~11月26日「前田家の至宝」にて富士茄子が展示される予定です!(石川県立美術館公式サイト)
とても貴重な機会ですので、是非、足を運びましょう!!
石川県立美術館令和5年度展覧会スケジュールにて「富士茄子」の写真が拝見できます
・国司茄子、富士茄子、北野茄子で「天下の三茄子」
・富士山の偉容にちなんで「富士」の銘が付けられたと推測されている